かぼす (犬)

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かぼす
飼い主の佐藤敦子に抱かれるかぼす(2023年、18歳時)
別名・愛称かぼちゃん
生物イヌ
犬種柴犬
性別メス
生誕2005年11月2日〈推定〉
日本の旗 日本千葉県
死没2024年5月24日(2024-05-24)(18歳)
国籍日本の旗 日本
職業インターネットセレブリティ
著名な要素Doge
肩書き世界一有名な柴犬
飼い主佐藤敦子
公式サイトhttps://kabochan.blog.jp/

かぼす2005年11月2日〈推定〉[1] - 2024年5月24日[2])は、日本千葉県佐倉市で飼われていたメス柴犬[1]2010年代以降、定番のインターネット・ミームDoge」(ドージ)の象徴として世界的に広く知られ[3]世界一有名な柴犬とも言われた[4]

略歴[編集]

かぼすは、ブリーダーの廃業によって愛護センターに保護犬として持ち込まれた19匹の柴犬の中の1匹である[5]。その殆どは殺処分されたが、かぼすは運良くボランティア団体に救い出されて里親募集へ掛けられることになった[5]。「かぼす」と言う名はそのボランティア団体が付けたもので、カボスのような丸顔が由来のようである[6]

二児を育て上げ佐倉市で夫と二人で暮らしている幼稚園教諭の佐藤敦子は[3]「ケン」という体重18キロの大型雑種犬を飼っていたが[7]、ケンは2006年秋に10歳で急死し[1]フルタイムで働く自分が犬を飼うのはもう難しいと[1]なかなか心に空いた穴を埋められずにいた[7]

2008年[1]、佐藤は何気なく見た里親募集の Web サイトでかぼすを見つけた[7]。殺処分から間一髪逃れたというのに穏やかで優しそうな表情が印象的で[1]、たまたま近所に預けられていることにも運命的なものを感じ、胸を高鳴らせながら応募のメールを熱心にしたためて送信した[7]。そして翌日には早くも対面を果たしてトライアルに入った[7]。かぼすの正確な生年月日は不明だが、こうして佐藤家に来た2008年11月2日を以って3歳の誕生日ということにした[8]。家に来た当初はぬいぐるみのように大人しく、抱こうとすると嫌がって逃げるほどだったが[5]、2ヵ月ほどで家族の一員としてリラックスした面を見せるようになった[5]。柴犬の性格は一般に「賢く、攻撃的で、ほかの犬にあまり馴染まない」と言われたりするが[6]、佐藤はかぼすの性格は少し変わっていて「心の優しい、のんびり屋」と理解した[5]

かぼすを預かって1年半ほど後、かぼすを愛護センターから救ったボランティア団体が母猫から育児放棄された子猫を預かっていると知り、それまであまりに関心が無かった佐藤だが、不思議と心が動いてこれも里親として迎えることにした[7]。「つつじ」と名付けられたこのメスの子猫を、かぼすはすんなり受け入れ、姉妹のような睦まじい関係になった[5]。2010年にはオスの子猫の「ぎんなん」も加わり[1]、猫たちと戯れるうちにかぼすも素直な感情表現ができるようになっていった[1][注釈 1]

佐藤はかぼすとの散歩で日々感じる四季折々の自然の味わいや感動を自分の中だけでしまっておくのは勿体ないと感じ、誰かと分かち合いたいと[7]2009年6月からブログを始めた[6]。かぼすと猫のほのぼのした写真だけでなく、幼稚園教諭ならではの物柔らかな語り口も読者に受けて人気ブログに成長し[7]、日本だけでなく海外からも取材を受け、かぼすとの生活は書籍化やカレンダー化もされた[5]

2010年代以降、英語圏のネット・コミュニティでかぼすの写真はインターネット・ミーム「Doge」の象徴として広く知られるようになった[3]

2022年12月にかぼすは急性の肝胆管炎慢性リンパ性白血病に罹り、黄疸を起こして危篤状態に陥ったが、抗生物質で幸い持ち直した[3]

モニュメント除幕式の様子

2023年11月2日(かぼすの18歳の誕生日にあたる)には、世界各地のかぼすファンからの寄付によって、かぼすが散歩でよく訪れるという佐倉ふるさと広場に「かぼすちゃんモニュメント」が設置された[9][10]2024年2月には、かぼすをあしらったデザインマンホールがお披露目され、佐倉ふるさと広場内に設置された[4]

2024年5月24日、ブログにて同日7時50分に死亡したことが発表された[2]。享年18(推定)[4]

2024年5月26日、同日成田市内で行われたお別れの会には250人を超すファンが参列。海外の報道機関も取材に訪れた[11][12]

日常[編集]

一軒家の屋内で飼われている座敷犬であり[1]、佐藤からは「かぼちゃん」と呼ばれている[13]。飼い主の佐藤がフルタイムで働いているため、日中は猫たちと共に留守番をしている[1]。大半は寝て過ごしているようだが、時には猫たちとイタズラしたり盗み食いをしているようである[1]。普段も食事の時間には特にテンションが上がる性格である[1]。夜は佐藤夫婦および猫たちと同室で就寝している[1]。朝夕に充分時間をかけて佐藤と散歩し、週末は自然を満喫しながら特にゆったり散歩している[1]にはキャンプにも出かける[1]

インターネット・ミームとして[編集]

インターネット・ミームとして広く知られるようになった、前足を重ね口を引きつらせながら警戒するように流し目をするかぼすの写真は[6]、2010年2月13日に佐藤がブログへアップしたものである[14]。手前に写りこんでいる手は佐藤の夫のもので、遊ぼうと誘う彼をかぼすが軽くあしらっている瞬間を捉えている[13]

英語圏の SNS 界隈では、2010年10月に Reddit に変顔のコーギーの写真がアップされたのを嚆矢として、犬を素材としたコラージュなどのミームが dog をもじった「Doge[注釈 2]と呼ばれる面白画像ジャンルを形成した[6]2012年9月には柴犬の写真にカラフルなコミック体のフレーズを重ねる「Shiba Confessions」(柴犬の告白)と言うジャンルが出来たが、これもムーブメントというほどのものではなかった[6]。ところが例のかぼすの写真が投下されると、これが Reddit や Tumblr といった SNS で爆発的連鎖反応を引き起こし[3]、珍妙なセリフを重ねたり他の写真とシュールにコラージュしたりといったネタの格好の素材として[3]2013年7月にはかぼすは「Doge」の象徴的存在となっていた[6]

2013年に、かぼすの顔は暗号資産 Dogecoinアイコンとなった[3]。ドージコインはチャリティで使われることが多いため、佐藤はこのアイコン化に好意的である[15]。一方で、佐藤になりすましてかぼすの写真を NFT で売りさばく例が現れたのを佐藤は憂い、「かぼちゃんの写真は誰かのお金儲けのために使われるのではなく、誰かの幸せのために使ってほしい」と友人に相談し[13]、Doge の素材になった写真を含め計8枚のかぼすの写真が[15]2021年6月に NFT のチャリティ・オークションにかけられ[13]、4億7000万円で落札された[15]。売り上げは当初の佐藤の意向通り、あしなが育英会日本赤十字社など[13]国内外の子供人権保護団体に寄付され[15]、さらに残った分は国際 NPO プラン・インターナショナルとワールド・ビジョンを通してベトナムイラク南スーダン学校建設に使われた[15]

2023年4月4日早朝(日本時間)、イーロン・マスクが運営しているSNSTwitter」のロゴを青い鳥からかぼすの画像に差し替えた[16][17]。その後、同月7日までに元のロゴに戻った[18][19]

素材となった例[編集]

著名人との面会[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ その後に「おにぎり」という猫も加わって犬1匹、猫3匹にになっている[5]
  2. ^ 「犬」を「イッヌ」と呼ぶようなもの。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 『かぼすちゃんとおさんぽ。』ブログ管理人かぼすママさん登場!”. メディア. アイリスプラザ (2017年3月7日). 2023年4月4日閲覧。
  2. ^ a b かぼすママ (2024年5月24日). “ありがとう、かぼちゃん!”. かぼすちゃんとおさんぽ。. ライブドアブログ. 2024年5月24日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l ネットで人気爆発の柴犬「かぼす」、重病で危篤状態”. CNN.co.jp. CNN (2022年12月28日). 2023年4月4日閲覧。
  4. ^ a b c かぼすちゃん(世界で人気者の柴犬)”. 千葉県佐倉市公式ウェブサイト. 佐倉市 (2024年5月24日). 2024年5月24日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h 松田義人 (2022年10月8日). “元保護犬を引き取ったら…不思議な縁、猫3匹を飼うことに まるで4きょうだいのように幸せに暮らす日々”. 神戸新聞NEXT. 神戸新聞社. 2023年4月4日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g 佐藤敦子 (2014年1月4日). “The Verge”. かぼすちゃんとおさんぽ. ライブドアブログ. 2023年4月4日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h 「かぼすちゃんとおさんぽ。」のかぼすママさん登場!”. 今週のピックアップブロガー. エキサイトブログ (2011年7月4日). 2023年4月4日閲覧。
  8. ^ 佐倉ふるさと広場(千葉県佐倉市臼井田2714)の「かぼすちゃんモニュメント」の銘文
  9. ^ 佐倉市 (2023年11月2日). “【千葉県佐倉市】佐倉ふるさと広場に世界から愛される「かぼすちゃん」のモニュメントが誕生”. PR TIMES. 2023年11月2日閲覧。
  10. ^ @kabosumama (2023年11月4日). "A wonderful monument was erected in Sakura Furusato Hiroba ..." X(旧Twitter)より2023年11月4日閲覧
  11. ^ マハール有仁州 (2024年5月26日). “世界一有名なシバイヌ「かぼす」旅立つ お別れ会で各地から哀悼の声”. 朝日新聞. 2024年5月27日閲覧。
  12. ^ “世界一有名な柴犬”最期の別れ マスク氏注目かぼすちゃん 海外メディアも集結”. テレビ朝日 (2024年5月27日). 2024年5月27日閲覧。
  13. ^ a b c d e 世界一有名な柴犬「かぼす」NFTで画像を売ったら4億7000万円!飼い主は「殺処分寸前で救われ、特別な使命が」”. au Webポータル. mediba (2023年4月22日). 2023年4月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月27日閲覧。
  14. ^ 佐藤敦子 (2010年2月13日). “今夜のご飯は何ですか?”. かぼすちゃんとおさんぽ。. ライブドア. 2023年4月27日閲覧。
  15. ^ a b c d e 阿部慶次郎 (2022年11月19日). “NFTが4.7億円落札!コラ画像や暗号資産ドージコインで世界を熱狂させた柴犬、かぼすちゃんの飼い主が思うこと”. @DIME アットダイム. 小学館. 2023年4月4日閲覧。
  16. ^ 冨田龍一 (2023年4月4日). “ツイッターの「鳥」ロゴが「柴犬」に”. Newsweek日本版. 2023年4月4日閲覧。
  17. ^ ツイッターのロゴが柴犬に、マスク氏が推す仮想通貨「ドージコイン」急騰”. CNN.co.jp (2023年4月4日). 2023年4月4日閲覧。
  18. ^ Twitterのアイコン、柴犬から青い鳥に戻る 「コナミコマンドで回転」はそのまま”. ねとらぼ (2023年4月7日). 2023年4月7日閲覧。
  19. ^ 松本和大 (2023年4月7日). “Web版Twitterのアイコン、犬から鳥に戻る”. ケータイ Watch. 2023年4月7日閲覧。
  20. ^ 冨田龍一 (2023年4月4日). “ツイッターの「鳥」ロゴが「柴犬」に”. ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト. Newsweek. 2023年4月4日閲覧。
  21. ^ 竹元かつみ (2018年4月2日). “イーサリアム創設者Vitalik氏、仮想通貨Dogecoinのモデル柴犬“かぼすちゃん”と邂逅”. INTERNET Watch. インプレス. 2023年4月4日閲覧。

外部リンク[編集]